アルケリス株式会社は、金属加工メーカーである株式会社ニットーからスピンオフするかたちで独立したベンチャー企業です(2020年設立)。
「世界の立ち仕事をアップデートする」を事業コンセプトに掲げ、 立ち仕事による身体的負担を軽減するアシストスーツ「archelis(アルケリス)」を主力製品とした製品開発製造および販売を手掛けています。
アシストスーツ「アルケリス」は、外科医の方から「オペ室で立ったままで座ったような姿勢を保てる製品ができないか」という相談を受けたことがきっかけで誕生しました。その後、医療現場に加え、製造業などの様々な現場で利用が進み多くの働く人々から高い評価を頂き今に至ります。
働きやすい職場づくりの方法の一つとしてアシストスーツに注目が集まっている一方で、導入を検討する企業の方から「体が疲れにくい」など主観的な評価だけでは、導入判断が難しいという声が多く寄せられていました。現場の作業者自身がアシストスーツの使用効果を実感していても、客観的な根拠を示せないことが導入の妨げとなることは、アシストスーツ業界全体に共通する問題でもありました。
このような事業背景の中で、アシストスーツ使用による身体負荷の軽減効果を定量化する手法の検討を開始しました。その過程で、都産技研墨田支所にて開催されたモーションキャプチャに関する技術講習会を活用し、作業者の動作解析による定量評価の可能性を見出しました。その際に公募型共同研究の募集を知り、今回の共同研究に至りました。
本共同研究では、アシストスーツの導入促進に資する「価値ある情報提供」を実現するため、定量的な評価に基づく情報提供基盤の構築を目的として、以下の研究開発に取り組み、アシストスーツの使用状況や作業動作をリアルタイムに把握する新たな仕組みを開発しました。
ひとつ目は、「IoT型アシストスーツ」の開発です。
既に販売しているアシストスーツにIoTセンサーを組み込み、足の動きやアシストスーツが支えている荷重を計測データとして取得し、データ解析を行うクラウドへリアルタイムに送信する機能を実装しました。
ふたつ目は、「クラウド型解析プラットフォーム」の構築です。
クラウドに蓄積された計測データをもとに作業姿勢を推定。その姿勢に応じて下肢の各筋肉部位にどのような身体負荷が発生しているかを解析するアルゴリズムの開発を行いました。身体負荷の定量化の実現は、モーションキャプチャシステムで取得した人の動作をもとに人体モデル上で動作を再現し、筋肉や関節に作用する力学情報を解析する筋骨格解析技術を用いました。これにより、アシストスーツ装着時における負荷軽減効果が身体部位別に具体的な数値情報として評価することが可能になります。
これらの解析結果は、現場の使用者や管理者の方などが場所を問わず容易に効果を確認できるようWebブラウザを介したダッシュボード形式で情報提供します。
概要図
「IoT型アシストスーツ」および「クラウド型解析プラットフォーム」を実際の金属プレス加工作業の製造現場に導入し、導入効果を検証する実証実験を実施しました。
実証実験の結果、実作業を行う作業者の方からアシストスーツを使用することで「身体的負担が軽減された」といった評価を得ると共に、それに対応する負荷軽減程度を定量的な数値データで示すことで、IoT型アシストスーツの有効性について具体的に納得していただくことができました。現場作業の【実感】と【客観的な利用効果】が同時に提示できたことは、本共同研究の大きな成果と言えます。
また現場管理者の方が閲覧され、現場作業者、管理者間で共有することで生産性の向上と身体負荷の軽減が両立した働きやすく且つ、安全な職場づくりが出来そうだと評価も得ることもできました。
本共同研究を通じ、アシストスーツ導入の判断促進だけでなく、導入後の有効性を具体的に示す運用を支援する情報提供基盤が構築できたと考えています。
今回の研究開発成果について、すでに導入を検討されている複数のユーザー企業様から問い合わせをいただいています。医療現場や工場などの産業分野を中心に、現場の要望に応じたデモンストレーションを順次実施しており、具体的な導入を見据えたフィールド実証の検討が進んでいます。
今後は、本研究で開発した技術の製品化を進めるとともに、有償パッケージとしてのサービス提供や運用も視野に入れ、事業化を推進していきます。さらに将来的には、自社製品にとどまらず、他社製アシストスーツも含めた効果を一元的に可視化できるプラットフォームの構築や、ライセンス提供による協業化など、より広い産業分野への展開を目指して取り組んでいきます。