株式会社コスモ計器は、本社工場を東京都八王子市に構え、創業50年を迎えた産業用計測器メーカーです。「お客様を通じて広く社会に貢献する」ことを企業理念とし、製品開発、製造販売およびアフターサービスまで一貫体制で事業活動を行っています。
今回の共同研究のコアとなるエアリークテスターは当社の主力製品です。自動車関連産業をはじめとする様々な業種で生産される製品、部品等の気密性能を検査し品質と信頼性を保証するための試験計測装置です。
当社の計測器を使用し、お客様の製品を検査していただき、その価値が高められるとともに市場へ繋がり、安心安全な製品が消費者の手に届く下支えをしております。
企業理念を達成するため、従業員は同じ価値観の下で、品質、環境方針を定め、行動指針を大切にしております。その中で顧客第一主義に徹し、製品とサービスを通じて顧客の課題を解決し、様々な企業のモノづくりを支えることで社会に貢献していきます。
気密性試験設備であるエアーリークテスターの2つの課題を解決し、より良いものとする為に公募型共同研究に取り組むことになりました。
1. 計測誤差に影響を及ぼす温度外乱の究明
気密性検査は空気の漏れ量を計測する方式であるため、温度の影響を受けないようにすることが重要です。現行のエアリークテスターは、温度計測4点で試験体の温度補正をし、誤差の最小化を行っていますが、長期にわたり試験を行う場合は環境変化が温度外乱を生み、当初の温度補正だけでは誤差を取り除くことが困難で、安定した試験設備稼働を行うためには、環境変動に伴う温度外乱を補正する計測機能の拡張が必要でした。
2. お客様現場で起きている事実把握の迅速化
上記のような誤差が増大するとお客様は検査設備の動作不良と判断し、早期解決を依頼されます。このような場合は異常事象しかわからないケースが多く、事実の確認を含め、お客様の現場へ何度も足を運ぶ必要があり、労力と時間の確保が大きな課題でした。
また、現場へ出向いたとしても時間経過の関係で原因究明に必要なデータが存在しているとは限らないため、異常事象発生直後に現場のデータを迅速かつ確実に収集する仕組みが必要でした。
「気密検査遠隔監視サポートシステム」を開発し課題の解決を実現しました。
1. 温度外乱を捉えるための計測機能の拡張
計測機能を拡張するために計測拡張ユニットを新規開発いたしました。既存のエアリークテスターを組み合わせることで計測点が最大13点拡張され、試験環境に存在する温度外乱要素を捕まえて適正な誤差補正を行うことが可能です。また、計測拡張ユニットには、エアリークテスターが計測した気密性能検査データと温度計測データ(既存計測分含む)を時間的に同期・集約し、お客様現場から離れた遠隔地のお客様技術サポートへデータ送信を行うネットワークインタフェース機能を装備し、遠隔にあるお客現場から技術サポートに必要なデータを遠隔収集することが可能です。
2. お客様現場でおきた事実の把握と対処有効な情報の生成、提供する仕組み
計測拡張ユニットから送信されてる検査データと計測データを連携させることで技術サポートにとって有用な情報を生成するための「遠隔監視アプリケーションソフトウェア」を開発しました。このソフトウェアが生成する情報を活用することで、お客様の現場で起きている異常事象の迅速な事実把握と原因の早期究明を実現します。
「遠隔監視アプリケーションソフトウェア」は、仮想化技術のひとつであるコンテナ技術を用い構築し、お客様が「気密検査遠隔監視サポートシステム」を利用する際に、お客様利用に最適なクラウド環境かオンプレ最適が選択できな柔軟なシステムを提供可能です。
概要図
「気密検査遠隔監視サポートシステム」を導入することで、より信頼性の高い気密性能検査と迅速で適切な技術サポートが実現できます。
1. 迅速な問題把握と早期対処による問題解決リードタイムの大幅短縮
従来は問題事象を把握するためにお客様の現場に直接出向きヒアリングしながら原因究明を行っていましたが、このシステムを使うことでお客様の現場に行かずとも問題事象の把握と調査が可能になり、迅速な原因究明による問題解決までの大幅な期間短縮が可能です。お客様現地での実証試験で本システムの有効性を検証したところ、客様技術サポート要員が費やす時間と労力が半減化するという結果を得ることができました。
2. 迅速なお客様対応による満足度向上
お客様の現場に行かずとも問題事象の把握と調査ができるようになり、多忙なお客様の最小限の対応だけで迅速な問題解決が可能となります。
3. お客様に利便性の高い技術レポートの提供
現在、定期校正や各種報告書などを紙書類で提供していますが、このシステムを利用していただくことでお客様の保有する任意の端末装置に電子情報として情報提供することが可能となり、お客様のペーパレス化や情報アクセスの利便性向上などが実現できます。また、試験結果を定期的にモニタリングすることで、問題事象が発生する前兆をいち早く捕らえることで予知保全への拡張も期待できます。
事業化へ向けた今後の課題は、お客様のニーズをさらに取り込み、多くのユーザ拠点を同時に結び情報を連携することでお客様にとって最適な技術サービスを提供することです。引き続き国内、国外のエアーリークテスターをお使いいただいているお客様へ共同研究で得た成果、有効性などをアピールし、製品化を進めて参ります。
高い気密性能を有する製品、部品の生産に携わっておられる多くのお客様に迅速かつ最適なユーザサポートによる高い生産性と信頼性のある検査環境を提供する「気密検査遠隔監視サポートシステム」を導入していただくことでお客様満足度の向上と現場力の向上に貢献できることを期待しています。