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支援事例(公募型共同研究)

株式会社イチカワ

画像による組立現場のデジタル化と企業間共有技術の開発
~組立作業現場をお持ちの企業様へ作業指導の伝達手段でお困りの方へ~
  • 専務取締役
    市川 敦士 様
  • 技術部係長
    寺田 学弘 様
  • 技術部IoT化推進室長
    和田 幸司 様

企業概要

株式会社イチカワは、本社を東京都羽村市神明台としております。
社会インフラ向けの変圧器、電子機器、電機機器、システム盤を製造しており、主な製品は一般産業向け、産業用プラント設備向け、電力システム向け、鉄道車輌向けの制御装置・各種機器となっております。
強みとしては、設計から製造、保守において、モノづくりの上流工程から下流工程のフルラインサポートを一括で請け負うことができます。
「信頼に応えるトランス・テクノロジー」をキャッチフレーズとして、創業から発展させてきた技術力とお客様の期待に応える信用力により、1963年から50年以上も電子、電機機器の構築、製造に携わってきました。これまでも、そしてこれからも我々は電子機器のパイオニアとして、歩んでいきたいと考えています。

企業HP:https://www.ichikawa.co.jp/

開発のきっかけ

中小製造業における人手による組立作業の現場では、生産性改善、技能継承、取引間サプライチェーンの作業指導において、次のような問題を抱えておりました。

・作業手順書を最初しか使わない、また読んでもわかりにくい

・ベテラン作業者にしかできない作業があり、作業者ごとに品質バラツキがある

・協力会社に作業委託する場合においても、作業指導が難しい

これらの課題に対し、現場でわかりやすい作業者目線のマニュアル・システムが必要だと動き出しました。分かりやすいマニュアルを組立ガイダンスとしてシステム開発し、システム完成度の高まりと共に社内の複数の現場で使われるようになりました。
公募型研究に応募したのは、これまで培ってきた組立ガイダンスのシステムが世の中で使われるチャンスではないかと考え、応募に至りました。

開発の概要

組立ガイダンスのシステムでは、作業台にモニターを設置し、モニターへ組立ガイダンスを配信します。作業者は、モニターに映し出される写真や動画によるわかりやすい指示に従って作業します。作業者が組立ガイダンスを先に進めると、自動的に工程ごとにステータスが完了に変更されます。作業の進捗状況はクラウド上へアップロードされ、作業監督者は蓄積された作業データの見える化によって進捗状況を確認できます。
この組立ガイダンスは、共同研究によって3つのアップグレードが行われています。

1つ目は、手軽な導入環境を提供できるクラウドサービス化です。ガイダンスはクラウド上から配信されますので、モニターを設置できるところであれば作業を確認できるようになります。

2つ目は、つながる工場を実現する、組立クラスタ企業を構成する企業間のデータ共有化です。取引先企業間のサプライチェーンで組立ガイダンスの情報共有ができるようになりました。

3つ目は、生産性改善ツールとしてのデータ有効性の検証です。各作業の作業内容、作業時間を把握、記録することで作業効率改善のポイントを見つけることができます。

概要図

概要図

導入効果

組立ガイダンスの導入によって3のポイントが改善されました。

1. 作業者ごとの品質バラツキの抑制と、記録による技術継承を実現
組立図と手順書を合わせた組立ガイダンスにより、ベテラン作業者にしかできない作業を解消し、蓄積されたデータの見える化により効率的な作業指導が行えるようになりました。実際の作業者の感想としても、パソコンの操作が得意でない方にも扱えており、ベテラン作業者にとっても手順を間違える心配がなくなりました。

2. 作業データを収集・蓄積し、作業改善に活用
組立ガイダンスのモニター画面で作業状況をインプットすることで作業データの収集と蓄積が行われ、作業データを分析することで更なる作業改善が行えるようになりました。

3. 遠隔地の企業間における作業状況の共有
データがクラウドサーバーに保存されることで、組立ガイダンスを委託先企業へ開示可能になりました。遠隔地の企業間において作業状況を共有できるため、発注元の企業様でも全体の状況を確認できるようになりました。

今、そしてこれから

共同研究の期間が終了し、完成度が向上した段階へと進んでおります。製品化への見通しも立ってきているところですが、一般販売の部分においてはまだまだ改良の余地があるので、開発期間を1年間延長する運びとなっております。今後の改良等については、市場調査のニーズを確かめながら開発する予定で、その間も社内や関連企業への展開は積極的に行っていき、改良開発を待たない二段構えで進めていきます。
課題や今後の改良としましては、動画マニュアル単体で使いたいという声だけでなく、企業同士が持つシステムやデータの連携などの要望があり、製品版に落とし込みを予定しております。
今後の可能性として、企業間同士のプラットフォームになる効果を期待しています。作業手順書としてのマニュアル機能だけでなく、お互いの企業が持っている強みを生かした基盤になれたらと思います。
開発した製品は、ITの技術が専門でない状況からの開発となりましたが、モノづくりの現場から少しずつITの技術を取り入れることで、社内アプリケーションを誕生させることができました。そして、オープンイノベーションによる共同研究という形で拡張することができた事は最大の喜びに感じております。
また、これからは誕生させたこの技術を世の中に浸透させたいと考えております。期待と喜びをもって今後の事業展開に繋げていきたいと思います。

画像による組立現場のデジタル化と企業間共有技術の開発
~組立作業現場をお持ちの企業様へ作業指導の伝達手段でお困りの方へ~