ウオールナットは非破壊調査のパイオニアとして、電磁波レーダによるトンネル調査をいち早く実用化。水路トンネルを始め、道路や鉄道トンネル、電力及び農業施設など重要な社会インフラを対象とし、斬新な発想とアイデアでスピーディーな調査、高精度な計測サービスを提供しています。また、実調査だけではなく、現地で得た経験や計測結果を元に新たな調査計測機器の研究開発などの技術提供や機器販売も行っています。
近年、既設土木構造物における維持管理の意識は社会的にも高まっており、効率的な管理手法が求められています。都内では道路の下に1~2kmに1箇所の割合で空洞が存在していると言われており、事故を未然に防ぐ為には、調査に膨大な時間と技術、そして費用がかかります。
当社でも計測機器を専用の計測車両等を用いてデータを取得し、社内にて熟練の技術者によって得られたデータの解析処理が行われていました。2012年の笹子トンネル天井板落下事故以降は道路、トンネル、橋など社会インフラに対する調査・点検のニーズが急増し、人員不足から効率や生産性が上がる方法はないのかと考えました。そこで都産技研のIoTやAI技術に着目し、業務改善の為の研究開発がスタートしました。
今回、空洞探査車「U3V」で取得した3Dデータと、交通規制を実施し獲得した2Dデータを、日本全国どこからでも取得できるようにクラウドサーバーに上げる事にしました。
「U3V」で取得するデータ量は1㎞あたり1GBほどになります。そのデータを1時間以内に転送させる為、通信品質が高いパラボラアンテナを使用。これによりビッグデータの転送が可能となりました。また、解析技術者の負担を減らす為、データフォーマット解析ソフトの開発にも取り組み、AIでの自動解析を行いました。AI学習が非常に困難だったものの、実際に空洞が確認されている箇所での実証実験では、すべての空洞を捉え、80%以上の正解率を出す事ができました。
IoTを用いたことにより、専門の技術者自身が現場に赴かなくてもデータ取得が可能となりました。これによりデータ取得作業や移動による負担が減少し省人化へと繋がりました。
取得したデータは熟練の技術者によって解析処理が行われていましたが、膨大なデータ量に対処する必要があるため、技術者へ大きな負担となっていました。AIによる自動解析がおこなえる様になった事で、技術者にかかる負担を半分ちかくへ軽減することができる様になりました。さらに解析の精度も学習ごとに改善され、コスト削減と生産性向上にもつながりました。
機材増設にて多くの現場調査へ赴けるよう準備を整えており、今後はトンネルや他の構造物にも活用して、更なる技術者のサポートに取り組みたいと考えております。また、現状のAIでは人間と全く同じに解析処理が出来ておりません。AIの精度がより人間に近づくように、データ学習やAIシステム自体のアップデートも検討していく予定です。